黄色ブドウ球菌について
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、人の皮膚や鼻、のど、髪の毛などにも存在する身近な細菌です。特に、手指の傷や化膿した部分には多く存在する場合があります。
黄色ブドウ球菌そのものが身近に存在しているからといって、すぐに食中毒が起こるわけではありません。問題となるのは、手指などから食品へ菌が付着し、食品の中で増殖して「エンテロトキシン」と呼ばれる毒素を作った場合です。
食品を扱う家庭や飲食店、食品工場、給食施設などでは、調理前の手洗いや手指の傷の管理、食品の温度管理などを組み合わせ、食品へ菌を「つけない」「増やさない」ことが大切です。
黄色ブドウ球菌はどこにいる?

農林水産省によると、黄色ブドウ球菌は自然界に広く分布しており、人の身体にも存在します。
- 皮膚
- 鼻や口の中
- のど
- 髪の毛
- 手指
- 傷口や化膿した部分
健康な人でも保有していることがあるため、「体調が悪い人だけが持っている菌」ではありません。
そのため、食品衛生では菌を完全に身体からなくすことを目指すのではなく、調理前の手洗いや作業中の衛生管理によって、食品へ菌を付着させないことが重要になります。
なぜ手指から食品へ広がりやすい?

黄色ブドウ球菌による食中毒では、人の手を介して食品が汚染されることがあります。
例えば、調理者が顔や髪に触れた後、そのまま食品を扱った場合や、手指に傷がある状態で食品へ直接触れた場合などです。
特に、加熱調理した後に手作業で仕上げる食品では注意が必要です。
- おにぎり
- いなりずし
- 巻きずし
- 弁当
- 調理パン
- 手作業で盛り付ける食品
農林水産省では、おにぎりを作る際は素手で直接握らず、ラップなどを使用することも勧めています。
手に傷があるときは特に注意

黄色ブドウ球菌は、手指の傷、特に化膿している部分に多く存在することがあります。
農林水産省では、手にけがをしている場合は調理を避け、やむを得ず調理する場合には、傷口を食品へ直接触れさせないよう、適切に処置したうえで使い捨て手袋などを使用するよう案内しています。
- 傷口をそのまま食品へ触れさせない
- 傷を適切に保護する
- 必要に応じて使い捨て手袋を使用する
- 手袋を着用する前にも手を洗う
- 汚れた手袋のまま別の作業を続けない
手袋を使用していても、手洗いが不要になるわけではありません。清潔な手で正しく着用し、作業内容に応じて交換することが大切です。
黄色ブドウ球菌による食中毒の特徴

黄色ブドウ球菌が食品中で増殖すると、「エンテロトキシン」と呼ばれる毒素を作ることがあります。この毒素を含む食品を食べることで食中毒が起こります。
農林水産省によると、食後1~6時間程度で症状が現れることがあります。
- 吐き気
- おう吐
- 腹痛
- 下痢
発熱は一般的にはみられないとされています。
食後比較的短い時間で症状が現れることが、黄色ブドウ球菌による食中毒の特徴の一つです。
「加熱すれば大丈夫」とは限らない

黄色ブドウ球菌そのものは熱に弱い細菌ですが、食品の中で作られたエンテロトキシンは熱に強い性質があります。
そのため、食品中で菌が増えて毒素が作られた後では、通常の加熱調理を行っても毒素を十分に無毒化できない場合があります。
黄色ブドウ球菌対策では、食べる直前に再加熱することだけに頼らず、最初から食品へ菌を付着させず、食品中で増殖させないことが重要です。
手洗いは食品への汚染を防ぐ基本
食品を扱う前には、石けんと流水で丁寧に手を洗いましょう。
特に次のようなタイミングでは、改めて手を洗うことが重要です。
- 調理を始める前
- トイレを使用した後
- 生の肉や魚、卵などを触った後
- 顔や鼻、髪などに触れた後
- ごみを扱った後
- 作業内容が変わるとき
指輪や腕時計などを着けたままでは汚れが残る場合があるため、食品を扱う際は外してから手洗いを行います。
食品中で菌を増やさないことも重要

手指から食品への付着を防ぐことに加えて、食品中で黄色ブドウ球菌を増やさないことも重要です。
- 調理した食品を長時間室温へ放置しない
- 保存が必要な食品は速やかに冷蔵する
- 弁当などは保冷して持ち運ぶ
- 調理後の食品はできるだけ早めに食べる
黄色ブドウ球菌による食中毒では、一度毒素が作られてしまうと加熱だけでは対処しにくいため、手指衛生と温度管理の両方を行うことが大切です。
食品を扱う現場では手指衛生環境を整える

食品工場、厨房、給食施設など、多くの食品を扱う現場では、従業員一人ひとりが適切な手洗いを行うことに加えて、手指衛生を継続しやすい環境を整えることも大切です。
手洗い設備の配置や作業動線、石けん、手指を乾燥させる設備などを適切に整え、作業の切り替え時にも手洗いを行いやすい環境づくりを心がけましょう。
また、手洗い後に汚れた場所へ触れないよう、設備の配置や作業手順を確認することも、食品への二次汚染を防ぐうえで重要です。
まとめ
黄色ブドウ球菌は、人の皮膚や鼻、口、髪、手指などにも存在する身近な細菌です。特に手指の傷や化膿した部分には多く存在する場合があり、手から食品へ菌が付着することで食中毒につながることがあります。
黄色ブドウ球菌そのものは熱に弱い一方、食品中で作られるエンテロトキシンは熱に強いため、「最後に加熱すれば大丈夫」と考えることはできません。
調理前や作業の切り替え時には丁寧に手を洗い、手に傷がある場合は食品へ直接触れないよう適切に保護します。また、食品を適切な温度で管理し、菌を食品へ「つけない」「増やさない」ことが大切です。
出典・参考情報(官公庁・公的機関公表資料)
- 農林水産省「黄色ブドウ球菌(細菌)[Staphylococcus aureus]」
- 農林水産省「これで解決!食中毒予防のポイント」
- 農林水産省「調理器具・調理編」
- 厚生労働省「食事にひそむキケン~黄色ブドウ球菌」
- 厚生労働省「細菌による食中毒」
注記:本ページは、黄色ブドウ球菌と食中毒予防に関する一般的な情報提供を目的として、公的機関等の公表資料をもとに作成しています。個別の食品の安全性や、特定の症状の原因を判断するものではありません。食後におう吐、腹痛、下痢などの症状が現れた場合は、必要に応じて医療機関や保健所へご相談ください。
