冬の加湿器、衛生管理は大丈夫?――乾燥対策とレジオネラを防ぐ施設管理の基本

衛生関連情報

気温が下がり、暖房を使用する時間が長くなる冬は、室内の空気が乾燥しやすくなります。

厚生労働省は「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)への総合対策に関するQ&A」の中で、空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下するとし、特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使用して適切な湿度(50~60%)を保つことも感染症対策の一つとして示しています。

一方で、加湿器は「水を使用する設備」です。

タンク内の水を長期間交換しなかったり、容器やフィルターなどの清掃が不十分だったりすると、機器内部で微生物が増殖する可能性があります。

厚生労働省では、加湿器内の汚染された水から発生したエアロゾルを吸い込んだことなどが原因とされるレジオネラ症の感染事例を踏まえ、加湿器の衛生管理について注意を呼びかけています。

冬本番を迎える前に、オフィス、介護施設、宿泊施設、店舗などで使用している加湿器の管理方法を改めて確認してみましょう。

冬の感染症対策では「適度な湿度」が大切

冬の乾燥対策として室内で加湿器を使用しているイメージ

冬季は暖房の使用などによって、室内の空気が乾燥しやすくなります。

厚生労働省の令和8年度冬季ARI総合対策Q&Aでは、急性呼吸器感染症の予防において、手洗いなどの基本的な感染対策に加え、「適度な湿度の保持」が挙げられています。

乾燥しやすい室内では、加湿器などを利用し、相対湿度50~60%を保つことも効果的とされています。

ただし、「湿度は高ければ高いほどよい」という意味ではありません。

施設では室温や換気状況、建物の設備なども確認しながら、適切な湿度を維持することが大切です。

なお、建築物衛生法の対象となる特定建築物では、空気調和設備を設けている場合の居室の相対湿度について、おおむね40%以上70%以下という建築物環境衛生管理基準が定められています。

感染症対策として示される「50~60%」と、建築物衛生法の「40~70%」は目的や対象が異なるため、施設では適用される基準や設備の管理方法に従って湿度を調整しましょう。

加湿器が衛生上のリスクになることも

冬の乾燥対策として室内で加湿器を使用しているイメージ

乾燥対策に役立つ加湿器ですが、管理が不十分な状態で使用を続けると、加湿器内部の水が汚染されることがあります。

特に、水を細かな水滴として空気中へ放出するタイプの加湿器では、タンク内の水が汚染されていた場合、微細な水滴である「エアロゾル」と一緒に微生物が空気中へ放出される可能性があります。

厚生労働省は、高齢者施設において、家庭用の卓上型・床置き型加湿器内の汚染水から発生したエアロゾルを吸入したことなどが原因とされるレジオネラ症の感染事例が報告されたことを受け、加湿器に関する衛生上の措置を指針に追加しています。

加湿器は「水を入れて運転するだけの機器」ではなく、衛生管理が必要な設備として考えることが重要です。

レジオネラ症とは

レジオネラ症は、レジオネラ属菌によって起こる感染症です。

レジオネラ属菌は自然界の土壌や淡水などに存在し、循環式浴槽や給湯設備、冷却塔、加湿器などの人工的な水環境でも、条件によって増殖することがあります。

レジオネラ属菌に汚染された細かな水滴(エアロゾル)を吸い込むことなどによって感染する場合があります。

厚生労働省では、超音波振動などを利用する加湿器を使用する場合には、毎日水を入れ替え、容器を洗浄するよう呼びかけています。

一方、水を加熱して蒸気を発生させるタイプでは、レジオネラ症の感染源となる可能性は低いとされています。

ただし、加湿方式にかかわらず、使用する機器の取扱説明書に従って、水交換、清掃、フィルター等のメンテナンスを適切に行うことが基本です。

「水を足すだけ」の管理になっていませんか?

加湿器を長時間使用する施設では、タンクの水が少なくなるたびに水を継ぎ足して使用してしまうことがあります。

しかし、古い水を残したまま継ぎ足す管理では、タンク内を十分に洗浄する機会が少なくなります。

厚生労働省のレジオネラ症予防に関する技術上の指針では、家庭用加湿器について、タンクの水を毎日完全に交換するとともに、タンク内を清掃することが示されています。

施設で卓上型・床置き型の加湿器を使用する場合には、単に水を補充するのではなく、毎日の管理作業として水交換と清掃を組み込んでおきましょう。

毎日確認したい加湿器の衛生管理

加湿器のタンクを清掃し水を交換しているイメージ

日常的に使用する加湿器では、次のような管理を習慣にすることが大切です。

  • タンクの水を毎日完全に交換する
  • 水を交換するときにタンク内部を清掃する
  • 古い水へ新しい水を継ぎ足すだけの使用を避ける
  • 汚れやぬめりがないか確認する
  • フィルターなどは取扱説明書に従って清掃・交換する
  • 使用しない期間は水を残したままにしない
  • 使用開始前やシーズン終了時にも十分な清掃を行う

特に複数の職員が加湿器の給水を行う施設では、「誰かが清掃しているはず」という状態にならないよう、担当者や清掃頻度を明確にしておくと管理しやすくなります。

清掃日やフィルター交換日などを簡単なチェック表に記録しておくことも、管理漏れの防止につながります。

空調設備に組み込まれた加湿装置も管理が必要

施設の空調設備や加湿装置を点検しているイメージ

オフィスビルや大型施設では、卓上型の加湿器ではなく、空気調和設備に組み込まれた加湿装置を使用している場合があります。

こうした設備についても、レジオネラ属菌などの微生物が増殖しにくい状態を維持するため、定期的な点検や清掃が必要です。

厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」では、加湿装置について、使用開始時および使用期間中は1か月に1回以上、汚れの状況を点検し、必要に応じて清掃等を実施することが示されています。

また、1年に1回以上の清掃、使用開始時および使用終了時の水抜きと清掃も求められています。

ビル管理会社や設備管理担当者へ任せている施設でも、冬季の運転開始前に点検・清掃が行われているか確認しておくと安心です。

加湿器の種類だけで安全性を判断しない

加湿器には、超音波式、気化式、加熱気化式(ハイブリッド式)、蒸気式などさまざまな方式があります。

方式によって水の霧化方法や加熱の有無、フィルターの構造などは異なります。

そのため、「この方式なら掃除をしなくてもよい」と考えるのではなく、それぞれの機器に適した管理を行うことが重要です。

厚生労働省の感染対策の手引きでも、加湿器の種類にかかわらず、機器の取扱説明書を確認し、水の交換や機器・フィルターの清掃をこまめに行うよう示されています。

特に施設では、家庭用とは使用時間や利用環境が異なる場合もあるため、メーカーが定めるメンテナンス方法や交換周期も確認しておきましょう。

加湿と換気はセットで考える

冬は暖房効率を優先して窓を閉め切りがちですが、適度な湿度を保つことと、必要な換気を行うことは別々の対策です。

厚生労働省の令和8年度冬季ARI総合対策Q&Aでは、適度な湿度の保持とあわせて、常時換気設備や換気扇を運転し、必要な換気量を確保することも示されています。

加湿器を使用しているから換気を控えるのではなく、換気を行いながら室内の湿度も確認し、必要に応じて加湿量を調整しましょう。

湿度計などを活用すると、感覚だけに頼らず室内環境を確認できます。

施設で確認しておきたい加湿器管理チェック

  • 加湿器のタンクの水を毎日完全に交換しているか
  • 給水時にタンク内部も清掃しているか
  • 古い水へ継ぎ足すだけの使用になっていないか
  • タンクやトレーに汚れ・ぬめりがないか
  • フィルター等を取扱説明書どおりに清掃・交換しているか
  • 長期間使用しない場合に水を抜いているか
  • シーズン開始時・終了時に清掃しているか
  • 清掃担当者や管理方法が明確になっているか
  • 室内の湿度を実際に測定しているか
  • 加湿とあわせて必要な換気も行っているか
  • 空調設備の加湿装置について点検・清掃状況を確認しているか

施設内に複数台の加湿器がある場合は、設置場所、機種、清掃担当者、最終清掃日などを一覧にして管理する方法も有効です。

まとめ

冬の乾燥対策として加湿器は便利な設備ですが、適切に管理されていることが前提です。

厚生労働省は、乾燥しやすい室内では相対湿度50~60%を保つことを急性呼吸器感染症対策の一つとして示す一方、加湿器内の汚染水を原因とするレジオネラ症の感染リスクについても注意を呼びかけています。

加湿器を使用するときは、タンクの水を毎日交換し、容器やフィルターなどを適切に清掃することが基本です。

オフィス、介護施設、宿泊施設、店舗などでは、冬本番を迎える前に、加湿器の台数や設置場所だけでなく、「誰が、いつ、どのように清掃するのか」まで改めて確認しておきましょう。

適度な湿度、換気、手洗いなどの基本的な感染対策と、設備そのものの衛生管理を組み合わせて、冬の施設環境を整えていくことが大切です。

出典・参考情報(官公庁・公的機関公表資料)

注記:本ページは、冬季の室内環境および加湿器の衛生管理に関する一般的な情報提供を目的として、厚生労働省等の公表資料をもとに作成しています。加湿器や空気調和設備の具体的な維持管理方法は、機器の種類や施設の設備によって異なります。実際の管理にあたっては、使用する機器の取扱説明書、メーカーの指示、関係法令、自治体や施設の衛生管理基準等もあわせてご確認ください。

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