食品にカビが生えたら?――知っておきたいカビ・カビ毒と食品衛生の基本

衛生関連情報, 食中毒

パンや餅、果物、野菜など、食品にカビが生えているのを見つけた経験がある方も多いのではないでしょうか。

カビは自然界に広く存在する微生物の一つです。食品の製造に利用される有用なカビがある一方で、食品の品質を低下させたり、種類によっては人の健康に悪影響を及ぼす「カビ毒」を作ったりするものもあります。

食品衛生では、カビが生えてから対処するだけではなく、食品の保存方法や施設内の清掃、温度・湿気への配慮などを通じて、カビが生えにくい環境を日頃から整えておくことが大切です。

今回は、食品に生えるカビとカビ毒の基本、カビを見つけた場合の対応、施設や事業所で確認しておきたい食品衛生のポイントを紹介します。

食品に生える「カビ」とは?

カビは、空気中や土壌など自然環境のさまざまな場所に存在しています。

すべてのカビが人にとって有害なわけではありません。みそ、しょうゆ、かつおぶし、チーズなど、カビの働きを利用して作られる食品もあります。

一方、食品へ意図せずカビが生えると、見た目やにおい、味などの品質が低下するだけでなく、食品の安全性にも注意が必要になります。

農林水産省によると、カビの中には、人や家畜の健康に悪影響を及ぼす化学物質である「カビ毒」を作るものがあります。

「カビ」と「カビ毒」は同じものではない

カビ毒は、特定のカビが作る化学物質で、「マイコトキシン」と呼ばれることもあります。

食品に生えるすべてのカビがカビ毒を作るわけではありませんが、カビの種類を食品の見た目だけで判断することはできません。

食品から確認されることがある代表的なカビ毒には、アフラトキシン類、オクラトキシンA、デオキシニバレノール、パツリンなどがあります。

カビ毒によって汚染される可能性がある食品もさまざまで、穀類、豆類、ナッツ類、果実などで確認されることがあります。

大切なのは、「カビが見える食品だけが問題」「見えなければ必ず安全」ということではないと理解しておくことです。

カビが生えた部分だけ取れば食べられる?

カビが生えた食品は見える部分だけ取らず廃棄することを示すイラスト

食品の一部にカビを見つけたとき、「その部分だけ取り除けば食べられるのでは」と考えることがあるかもしれません。

しかし、目に見えている部分だけを取り除いても、カビが食品の内部や周囲へ広がっている可能性があります。

農林水産省では、餅など食品にカビが生えた場合、見えるカビを取り除くだけでは十分ではなく、カビが生えた食品は食べずに捨てるよう案内しています。

「もったいないから」と見える部分だけを削り取って利用するのではなく、食品に意図しないカビが確認された場合は、無理に食べないことが基本です。

加熱すればカビやカビ毒は大丈夫?

カビそのものは加熱によって死滅する場合がありますが、カビが作ったカビ毒まで安全になるとは限りません。

農林水産省によると、カビ毒には比較的熱に強いものがあり、ゆでる、焼くといった通常の調理条件では十分に分解されない場合があります。

そのため、カビが生えた食品を「しっかり焼けば食べられる」「煮込めば問題ない」と判断することは避けましょう。

カビを発生させてから加熱で対処しようとするのではなく、食品を適切に保存し、カビを生育させないことが重要です。

食品の保存方法を見直す

食品を冷蔵庫で適切に保存している様子

新鮮な食品でも、購入後や調理後の保存方法が適切でなければ、品質を安全に保つことが難しくなります。

食品は、それぞれの商品に表示されている保存方法を確認し、必要なものは速やかに冷蔵・冷凍することが大切です。

施設や事業所では、次のような点を確認しておきましょう。

  • 冷蔵・冷凍が必要な食品を適切な場所で保管しているか
  • 開封後の食品を長期間放置していないか
  • 賞味期限や消費期限だけでなく、開封日も確認できるようにしているか
  • 古い食品が棚や冷蔵庫の奥に残っていないか
  • 食品の容器や包装に破損がないか
  • 結露や水分がたまりやすい場所がないか
  • 冷蔵庫や食品保管場所を清潔に保っているか

冷蔵庫で保存していても、食品の品質が永久に保たれるわけではありません。保存方法を守り、できるだけ適切な期間内に使用することが大切です。

施設では清掃と点検も重要

食品保管場所や調理設備を清掃点検している様子

食品そのものだけでなく、食品を保管・調理する環境の衛生管理も重要です。

食品くず、ほこり、水分などが残っている場所は、衛生状態を悪化させる原因になります。

食品を扱う施設では、調理台、棚、冷蔵庫、保管容器などを日常的に清掃し、汚れや水分をためないようにしましょう。

また、冷蔵庫や保管庫の奥など、普段目につきにくい場所も定期的に確認することが大切です。

  • 棚や冷蔵庫内に食品くずや液漏れがないか
  • 容器の底や棚板に水分がたまっていないか
  • 食品の包装が破れていないか
  • 長期間保管されている食品がないか
  • 清掃しにくい隙間や設備周辺に汚れが残っていないか

清掃を行った後は、必要に応じて十分に乾燥させ、再び湿気や汚れがたまりにくい状態を維持しましょう。

カビを見つけたときに確認したいこと

施設内でカビが生えた食品を見つけた場合は、その食品を廃棄するだけで終わらせず、周囲の環境も確認しましょう。

  • 同じ場所に保管されている食品に異常がないか
  • 食品の包装や容器に破損がないか
  • 冷蔵・保管条件に問題がなかったか
  • 結露や水漏れなどが発生していないか
  • 棚や保管容器に汚れが残っていないか
  • 食品を長期間保管していなかったか

同じ場所で繰り返しカビが発生する場合には、単に食品を交換するだけではなく、保存環境や設備、清掃方法などに原因がないか確認することが必要です。

HACCPの考え方で日常の衛生管理を続ける

食品を扱う事業者では、食品に起こり得る危害をあらかじめ考え、日常的に管理することが重要です。

厚生労働省では、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理への取り組みを求めています。

HACCPでは、問題が発生した食品だけを確認するのではなく、原材料の受け入れから保管、調理、提供などの工程を通じて、食品衛生上の危害を予防・低減する考え方を取り入れます。

日常的な衛生管理では、食品や施設の状態を確認し、必要な清掃・洗浄方法や食品の取り扱い方法を決め、その実施状況を記録することも大切です。

カビについても、「見つけたら捨てる」だけではなく、「なぜ発生したのか」「どのようにすれば再発を防げるか」という視点で衛生管理を見直しましょう。

日常的に確認したい食品衛生のポイント

食品の保存や清掃、点検などカビ予防のポイントを示すイラスト

  • 食品ごとに適切な保存方法を守る
  • 冷蔵・冷凍が必要な食品は速やかに保管する
  • 開封後の食品はできるだけ早く使用する
  • 期限や開封日を確認し、在庫を長期間放置しない
  • 食品の包装や容器に破損がないか確認する
  • 棚、冷蔵庫、調理台などを清潔に保つ
  • 水分や結露がたまっていないか確認する
  • 食品にカビを見つけた場合は、見える部分だけを取り除いて使用しない
  • 異常のある食品を無理に食べたり提供したりしない
  • カビが繰り返し発生する場合は保存・設備・清掃方法を見直す

まとめ

カビは私たちの身の回りに広く存在しており、発酵食品などに利用される有用なものがある一方、食品の品質を低下させたり、健康に影響するカビ毒を作ったりするものもあります。

食品に意図しないカビが生えた場合は、見える部分だけを取り除いたり、加熱したりして食べるのではなく、食べずに廃棄することが基本です。

そして重要なのは、カビが生えてから対処することだけではありません。

食品を適切に保存し、冷蔵庫や保管場所を清潔に保ち、水分や汚れをためないこと、食品の状態を日常的に確認することが、カビの発生を防ぐための基本となります。

施設や事業所でも、食品の保存・清掃・点検・記録を日常の衛生管理として継続し、安全な食品を提供できる環境を整えていきましょう。

出典・参考情報(官公庁・公的機関公表資料)

注記:本ページは、食品に生えるカビやカビ毒、食品衛生に関する一般的な情報提供を目的として、公的機関等の公表資料をもとに作成しています。食品の安全性について判断に迷う場合は、無理に食べたり提供したりせず、商品の表示や製造者の案内、自治体・保健所等の情報もあわせてご確認ください。

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