冬に向けて、ノロウイルスによる食中毒への注意が必要な時期になってきました。
厚生労働省では2026年の食中毒発生事例を速報として随時公表しており、各自治体からも今年の発生状況が更新されています。
最新の公表値を見ると、東京都では2026年10月15日までにノロウイルスによる食中毒が35件発生し、患者数は563人にのぼっています。
神奈川県でも9月末までに28件・520人、名古屋市では10月9日までに3件・43人がノロウイルスによる食中毒として報告されています。
ノロウイルス食中毒は、一つの事例で多くの患者が発生することがあるのが特徴です。
これから12月~3月にかけて発生が多くなる時期を迎えるため、飲食店、給食施設、ホテル・旅館、介護施設などでは、冬本番前に改めて衛生管理を確認しておくことが大切です。
2026年も各地でノロウイルス食中毒が発生

自治体が公表している2026年の速報値を見ると、ノロウイルスによる食中毒は今年も各地で確認されています。
東京都では10月15日までに、食中毒全体で69件・患者1,004人が報告されています。
このうち、ノロウイルスによる食中毒は35件・患者563人でした。
前年の同じ10月15日まででは38件・750人だったため、東京都では前年同期を上回っている状況ではありませんが、今年も多くの患者が発生しています。
神奈川県では、2026年9月末までに食中毒全体で65件・患者698人が報告され、このうちノロウイルスは28件・患者520人を占めています。
さらに、神奈川県ではその後もノロウイルスによる食中毒事例が公表されています。10月3日には鎌倉市内の飲食店で患者8人、10月16日には綾瀬市内の給食施設で患者24人の事例が発表されました。
ただし、個別事例の公表日と自治体の月次集計の対象期間は必ずしも一致しません。例えば、10月3日に公表された鎌倉市の事例は、9月26日に提供された食事によるものです。そのため、速報値を見る際には、公表日だけでなく集計期間や発生日にも注意する必要があります。
名古屋市でも、10月9日までに確認された食中毒10件のうち、ノロウイルスによるものは3件で、患者数は43人となっています。
地域によって発生状況や集計時点には差がありますが、2026年もノロウイルスによる食中毒が各地で継続して発生しており、一度の発生で多くの患者につながる事例も確認されています。
前年2025年はノロウイルス患者が18,566人

2026年の速報を見るうえで参考になるのが、前年2025年の全国確定値です。
厚生労働省によると、2025年の食中毒は全国で1,172件、患者24,727人が報告されました。
このうちノロウイルスによる食中毒は462件、患者18,566人で、食中毒患者全体の75.1%を占めています。
2024年は276件・8,656人だったため、2025年は事件数・患者数ともに大きく増加しました。
特に2025年は、2月だけで144件・7,688人、3月にも121件・3,539人が発生しています。
冬から春先にかけて、一度に多くの患者を伴う食中毒事例が発生する可能性があることが分かります。
これから12月~3月は特に注意

厚生労働省は、ノロウイルスによる食中毒患者の約7割が12月から3月に発生するとしています。
ノロウイルスは一年を通して発生しますが、特に冬季に流行しやすくなります。
11月は、冬の流行期へ入る前に施設の衛生管理を見直すタイミングです。
「まだ大きな流行が起きていないから大丈夫」と考えるのではなく、患者が増える前から対策を確認しておくことが重要です。
食中毒は「件数」だけでなく「患者数」にも注意
ノロウイルスの発生状況を見るときは、事件数だけでなく患者数にも注目する必要があります。
飲食店や給食施設、仕出し・弁当、ホテル・旅館などでは、一度に多くの人へ同じ食品が提供されるため、一つの食中毒事例が多数の患者発生につながる場合があります。
神奈川県では9月末までのノロウイルス食中毒28件で520人の患者が報告されており、一つひとつの事例が複数の利用者へ影響していることが分かります。
施設では「何件発生したか」だけでなく、「一度発生すると多くの利用者へ影響する可能性がある」という視点を持つことが大切です。
原因は「牡蠣だけ」ではない
ノロウイルスというと、牡蠣などの二枚貝をイメージする方も多いかもしれません。
しかし、ノロウイルス食中毒は二枚貝だけが原因ではありません。
厚生労働省の2025年の原因食品別集計では、ノロウイルス食中毒462件のうち、魚介類は33件、そのうち二枚貝は32件でした。
一方で、「その他」に分類されたものは397件あり、そのうち382件は原因となった個別の食品ではなく「食事」が特定された事例でした。
つまり、「牡蠣を提供していない施設だからノロウイルス食中毒の心配はない」とは言えません。
感染した食品取扱者の手を介して食品が汚染されたり、調理器具などから二次汚染が起きたりする場合もあるため、食品の種類にかかわらず基本的な衛生管理が必要です。
症状がない食品取扱者から広がることも
ノロウイルスに感染しても、必ず嘔吐や下痢などの症状が現れるとは限りません。
症状がない場合や、軽い体調不良だけの場合もあります。
そのため、体調不良者だけに注意するのではなく、すべての食品取扱者が日頃から適切な手洗いを行い、食品や調理器具を汚染しない衛生管理を続けることが重要です。
また、下痢や嘔吐などの症状がある場合には、食品へ直接触れる作業を行わせないなど、施設側のルールをあらかじめ決めておきましょう。
冬本番前に改めて確認したい「手洗い」

ノロウイルス対策の基本となるのが、石けんと流水による手洗いです。
厚生労働省は、手洗いを手指に付着したノロウイルスを減らす最も有効な方法としています。
食品を扱う施設では、特に次のようなタイミングで手洗いを徹底しましょう。
- 調理や作業を始める前
- 食品を提供する前
- トイレを使用した後
- 生の食品を扱った後
- 清掃を行った後
- 嘔吐物や排泄物を処理した後
- 作業内容が変わるとき
指先、指の間、親指、手首などは洗い残しが起こりやすい場所です。
石けんを十分に泡立て、流水で丁寧に洗い流しましょう。
調理器具や施設内の二次汚染も防ぐ

食品取扱者の手だけでなく、調理器具、作業台、ドアノブ、トイレなどを介した二次汚染にも注意が必要です。
まな板、包丁、ふきん、調理台などは、使用後に十分な洗浄を行い、必要に応じて適切な方法で消毒します。
また、嘔吐物などには大量のノロウイルスが含まれている可能性があります。
施設内で嘔吐が発生した場合に備えて、処理方法、必要な物品、担当者などをあらかじめ確認しておくことも重要です。
処理後は周辺の環境や手指を介して汚染を広げないよう注意しましょう。
施設で確認しておきたいポイント
- 食品取扱者の健康状態を毎日確認しているか
- 体調不良を申告しやすい仕組みになっているか
- 石けんと流水による手洗いが徹底されているか
- 手洗い設備を常に使用できる状態に保っているか
- 調理器具や作業台の洗浄・消毒方法を共有しているか
- 食品の二次汚染を防ぐ作業手順になっているか
- 嘔吐物が発生した場合の処理方法を決めているか
- 清掃・消毒に必要な物品を準備しているか
- 従業員への衛生教育を定期的に行っているか
特に多数の利用者へ食事を提供する施設では、一つの衛生管理上の問題が大規模な食中毒につながる可能性があります。
冬の繁忙期へ入る前に、現場の手順を改めて確認しておきましょう。
まとめ
2026年もノロウイルスによる食中毒は各地で発生しています。
東京都では10月15日までに35件・563人、神奈川県では9月末までに28件・520人、名古屋市では10月9日までに3件・43人が報告されています。
前年2025年には、全国でノロウイルス食中毒が462件、患者18,566人発生し、食中毒患者全体の75.1%を占めました。
今年の速報値だけを見て「昨年より増えている」と判断することはできませんが、冬季に多発する傾向を考えると、これからの時期は引き続き注意が必要です。
飲食店、給食施設、ホテル・旅館、介護施設などでは、手洗い、健康管理、調理器具の衛生管理、嘔吐物への対応など、基本的な対策を今一度確認しておきましょう。
出典・参考情報(官公庁・公的機関公表資料)
- 厚生労働省「食中毒統計資料―令和8年(2026年)食中毒発生事例(速報)」
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
- 厚生労働省「食中毒の原因(細菌以外)―ノロウイルス」
- 東京都保健医療局「令和8年 東京都食中毒発生速報」
- 神奈川県「令和8年県内食中毒発生状況(県・保健所設置市六市を含む)」
- 神奈川県「食中毒の発生について」(2026年10月3日)
- 神奈川県「食中毒の発生について」(2026年10月16日)
- 名古屋市「令和8年食中毒発生状況(速報値)」
注記:本ページに掲載している2026年の数値は、厚生労働省および各自治体が公表している速報値をもとにしています。速報値は調査の進展等により後日変更される場合があります。また、自治体ごとに集計時点が異なるため、地域間の単純比較を目的としたものではありません。本ページはノロウイルス食中毒および施設における衛生管理に関する一般的な情報提供を目的としています。

