魚介類を生で食べる機会があるときに、気をつけたい食中毒のひとつがアニサキスです。刺身や寿司、しめさばなど身近な食品でも起こりうるため、春から夏にかけて魚介類を楽しむ機会が増える時期には、改めて基本的な予防策を確認しておきたいところです。
厚生労働省は、アニサキス食中毒の予防として、「新鮮な魚を選ぶ」「目視で確認して除去する」「冷凍または加熱する」といった基本を案内しています。特別に難しい対策ではありませんが、思い込みや油断があると見落としやすい点でもあります。
アニサキス食中毒はなぜ起こるのか

アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、その幼虫は白色の少し太い糸のように見えます。厚生労働省によると、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなどの魚介類に寄生することがあります。
アニサキス食中毒は、アニサキス幼虫が寄生している生鮮魚介類を、生のまま、または冷凍や加熱が不十分な状態で食べることで起こります。幼虫が胃壁や腸壁に刺入すると、激しい腹痛や吐き気、嘔吐などの症状を引き起こすことがあります。
また、アニサキス幼虫は、魚が死亡して時間が経つと、内臓から筋肉へ移動することが知られています。そのため、「新鮮そうに見えるから安心」とは言い切れず、購入後や調理時の扱いも重要になります。
予防の基本① まずは“新鮮さ”を意識する

厚生労働省は、予防の基本として、まず新鮮な魚を選ぶことを挙げています。丸ごと1匹で購入した魚を調理する場合は、できるだけ早く内臓を取り除くことが大切です。内臓をそのままにして時間が経つと、幼虫が筋肉に移る可能性があるためです。
また、魚の内臓を生で食べないことも重要です。生食文化のある食品でも、内臓部分は特に注意したいところです。家庭でも事業者でも、「鮮度を意識する」「内臓を放置しない」という基本を徹底することが、予防の第一歩になります。
予防の基本② 目視で確認して除去する
アニサキス対策では、目視で幼虫を確認して取り除くことも重要です。厚生労働省は、魚を調理する際には目視で確認して、アニサキス幼虫を除去するよう案内しています。
ただし、幼虫は白色で糸のように見えるため、見つけやすい場合もあれば、見落としやすい場合もあります。そのため、目視確認だけに頼り切るのではなく、新鮮な魚を選ぶことや、冷凍・加熱とあわせて考えることが大切です。
なお、「酢でしめれば大丈夫」「わさびをつければ安心」と思われることがありますが、厚生労働省は、一般的な料理で使う程度の食酢での処理、塩漬け、しょうゆやわさびではアニサキス幼虫は死滅しないとしています。味つけと安全対策は別のものとして考える必要があります。
予防の基本③ 冷凍または加熱でしっかり対策

厚生労働省は、アニサキス幼虫は冷凍や加熱で死滅すると案内しています。具体的には、冷凍する場合は-20℃で24時間以上、加熱する場合は70℃以上、または60℃なら1分が目安です。
生で食べる予定がある魚介類でも、十分な冷凍処理がされているかどうかは大切なポイントです。また、加熱して食べる料理では、表面だけではなく中心までしっかり火が通るよう意識したいところです。特に家庭では、見た目だけで判断せず、確実に加熱することを心がけると安心です。
症状が出たときは早めの受診を
厚生労働省によると、アニサキス食中毒では、生の魚介類を食べた後、1時間から数日で症状が出ることがあります。急性胃アニサキス症では12時間以内に激しいみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐がみられることがあり、急性腸アニサキス症では十数時間以降に激しい下腹部痛が起こることがあります。
食後に強い腹痛などの異変があった場合は、自己判断で様子を見すぎず、早めに医療機関へ相談することが大切です。アニサキス幼虫に対する効果的な治療薬はなく、胃アニサキス症では胃内視鏡による摘出が行われることがあります。
最後に
アニサキス食中毒を防ぐために大切なのは、特別な知識よりも、基本を押さえることです。新鮮な魚を選ぶこと、目視で確認すること、必要に応じて冷凍または加熱すること。この3つを意識するだけでも、リスクを下げることにつながります。
魚介類をおいしく安全に楽しむためにも、家庭でも事業者でも、改めて基本の確認をしておきたいところです。
出典・参考情報(官公庁・自治体公表資料)
- 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
- 厚生労働省「アニサキス食中毒に関するQ&A」
- 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう(事業者向けリーフレット)」
- 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう!」
注記:本ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。検査や薬の使用、保険適用の可否などについては、必ず医師や専門機関にご相談ください。体調不良や緊急の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

