梅雨前に見直したい厨房の衛生管理――手洗い・器具・温度管理の基本

衛生関連情報, 食中毒

梅雨前から夏前にかけては、厨房を持つ現場で改めて衛生管理を見直したい時期です。気温や湿度が上がり始めると、食品の取り扱いや保管、調理後の管理に少しの緩みがあっても、食中毒につながるリスクが高まりやすくなります。

食中毒というと、特定の食材や特定の業種だけの問題のように見えることがありますが、実際には、手洗い、器具の使い分け、温度管理、従業員の体調確認といった基本が守られているかどうかが大きく影響します。だからこそ、この時期は特別な対策を増やす前に、まず日常の運用が崩れていないかを確認することが大切です。

また、今年も春の段階から、飲食店、移動販売、集団給食など、さまざまな現場で食中毒事例が公表されています。季節の変わり目だからこそ、「まだ真夏ではないから大丈夫」と考えず、今のうちに基本を見直しておきたいところです。

統計から見る、梅雨前後に食中毒へ注意したい理由

食中毒の月別発生状況を示したグラフ

食中毒は一年を通して発生していますが、暖かく湿気の多い時期は、細菌の増殖が活発になりやすく、特に注意が必要とされています。梅雨前から夏前は、厨房の温度や湿度だけでなく、食材の保管、調理後の放置、ふきんや器具の乾きにくさなど、日常業務の中で見落としやすい条件が重なりやすい時期でもあります。

厚生労働省の食中毒統計では、月別の発生状況が公表されており、年間を通じて発生はあるものの、季節によって注意したいポイントが変わることが分かります。冬はノロウイルスが目立ちやすく、暖かくなる時期からは細菌性の食中毒にも改めて目を向ける必要があります。

今年も春の段階で、ノロウイルス、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などによる食中毒が自治体から公表されています。つまり、「夏本番になってから」ではなく、「その前から基本を崩さない」ことが重要だと考えやすい状況です。

この時期に注意したい病因物質

主な病因物質別の食中毒事件数を示したグラフ

厚生労働省の令和6年食中毒発生状況の概要では、患者数2人以上の事例における病因物質別事件数として、ノロウイルスとカンピロバクターの割合が高く示されています。ノロウイルスは冬の印象が強いものの、調理従事者を介した汚染や二枚貝などを通じた食中毒は季節を問わず起こりうるため、冬だけの問題として扱わないことが大切です。

一方で、カンピロバクターやサルモネラ、腸管出血性大腸菌のように、加熱不足や交差汚染と強く関わる病因物質は、暖かい時期に向けて改めて注意したい対象です。厨房では、食材そのものだけでなく、調理器具、手袋、ふきん、トング、冷蔵設備など、病因物質を広げるきっかけになりやすいものが多くあります。

食中毒対策というと、それぞれの病因物質ごとに別の対応が必要なように見えるかもしれませんが、実際には「手を介して広げない」「器具を使い分ける」「温度を守る」「症状のある人が食品を扱わない」といった基本が共通しています。だからこそ、統計や事例を見るときも、まずは現場で共通して見直せるポイントに目を向けることが大切です。

見直したい基本① 手洗いと体調確認

石けんと流水で手洗いを行うイメージ

厨房の衛生管理でまず確認したいのは、手洗いと体調確認です。手洗いは、作業前、食材に触れる前、トイレの後、清掃の後など、基本のタイミングで確実に行うことが大切です。ルールとして決めていても、忙しいときほど省略や短縮が起こりやすいため、手洗い設備が使いやすいか、石けんやペーパータオルが不足していないかまで含めて確認したいところです。

また、ノロウイルスなどを想定すると、症状のある人が食品を直接取り扱わないことも重要です。嘔吐、下痢、腹痛などの症状がある場合に無理をして勤務すると、厨房内に病原体を持ち込むきっかけになりかねません。日々の体調確認を、形だけで終わらせず、実際の判断につながる運用にしておくことが大切です。

手洗いは「洗ったつもり」になりやすい動作でもあります。だからこそ、洗い残しやすい部位を意識すること、洗った後に不必要な場所へ触れない動線にすること、共用タオルを避けて清潔に乾かせる環境を整えることまで含めて見直すと、衛生管理の質を高めやすくなります。

見直したい基本② 器具・手袋・動線の管理

調理器具を衛生的に管理するイメージ

次に見直したいのは、器具、手袋、動線の管理です。生の食材に触れた器具をそのまま完成品に使わない、調理工程ごとに器具を使い分ける、洗浄後の器具を清潔に保つといった基本は、忙しい時ほど崩れやすくなります。

手袋を使う場合も、「着けているから安心」ではありません。衛生的な手で着けること、汚れたまま別の工程に移らないこと、必要なタイミングで交換することが大切です。手袋のまま冷蔵庫の扉や調味料、タッチパネルなどに触れれば、汚染を広げる可能性があります。

また、厨房内の動線も重要です。原材料の受け入れ、下処理、加熱、盛り付け、提供前の一時保管などが、無理なく分けられているかを見直しておくと、交差汚染を防ぎやすくなります。特に、ふきんやまな板、トング、バットなど、繰り返し使うものの扱い方は、実際の現場で確認しておきたいポイントです。

見直したい基本③ 温度管理と置きっぱなしの見直し

温度管理を確認するイメージ

梅雨前から夏前にかけては、温度管理も改めて見直したい項目です。厚生労働省は、テイクアウトやデリバリーを含む食品の取り扱いで、調理後は速やかに10℃以下まで冷やすか、65℃以上で保管することを目安として案内しています。常温に長く置かれた食品は、細菌が増えやすい状態になりやすいため、置きっぱなしを避ける運用が重要です。

厨房では、加熱後の放冷、盛り付け後の一時保管、仕込み中の食材の置き場所など、温度管理が崩れやすい場面がいくつもあります。冷蔵庫や冷凍庫の温度確認だけでなく、作業台の上に置かれている時間、提供までの待機時間、保冷・保温設備の使い方まで含めて見直すと、管理しやすくなります。

また、加熱不足にも注意が必要です。肉類は中心部75℃で1分以上が目安とされており、二枚貝などノロウイルス汚染のおそれがある食品では、中心部85〜90℃で90秒以上の加熱が望ましいとされています。加熱後の管理とあわせて、「十分に加熱できているか」も厨房で再確認しておきたいところです。

まとめ

梅雨前に見直したい厨房の衛生管理は、特別な対策を増やすことよりも、日常の基本を崩さないことから始まります。手洗い、体調確認、器具の使い分け、手袋運用、温度管理といった基本は、どの現場でも共通する土台です。

今年も春の段階で、ノロウイルス、サルモネラ、腸管出血性大腸菌などによる食中毒が各地で公表されています。つまり、気温や湿度が本格的に上がる前から、厨房の衛生管理を見直す意味は十分にあります。

まずは、今のルールが現場で本当に続いているか、備品や導線に無理がないか、忙しいときほど崩れやすい場面がどこにあるかを確認してみてはいかがでしょうか。基本を積み重ねることが、結果としてもっとも実効性の高い食中毒予防につながります。

また、手洗い後の衛生環境を安定して保つには、ルール整備に加えて設備面の見直しも大切です。弊社のNEWスーパーMは、手洗い後の利用や入室管理システムとの連携、手指の除菌などに活用されています。手洗い後の衛生環境づくりを見直す際の一つの選択肢として、こうした設備面の工夫もあわせて検討したいところです。

出典・参考情報(官公庁・自治体公表資料)

注記:本ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。検査や薬の使用、保険適用の可否などについては、必ず医師や専門機関にご相談ください。体調不良や緊急の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

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