2024年は感染症の発生が例年に比べて大幅に増加し、特に劇症型溶血性レンサ球菌感染症、RSウイルス感染症、手足口病、リンゴ病(伝染性紅斑)、マイコプラズマ肺炎などが相次いで報告されています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が落ち着きを見せ始めたことで、感染対策が緩和される一方、長期間の対策によって免疫を持たない人が増加したことが要因と考えられます。
この状況を踏まえ、感染症流行の背景と原因、今後求められる正しい対策についてご紹介いたします。
感染症の流行状況
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加
劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS:Streptococcal Toxic Shock Syndrome)は、A群溶血性レンサ球菌によって引き起こされる重篤な感染症です。感染が進行すると細菌が血液中に侵入し、全身に毒素が広がることで急速に重症化します。2023年からその流行が顕著となり、2024年も依然として高い感染者数が報告されています。
国立感染症研究所のデータによると、2023年の劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者数は過去最高を記録し、2024年に入ってからもその傾向が続いています。主な症状としては以下が挙げられます。
- 発熱や筋肉痛
- 傷口の腫れや痛み
- 急速に進行するショック状態や多臓器不全
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は「人食いバクテリア」とも呼ばれ、短時間で命に関わる可能性があるため、早期の受診と適切な治療が非常に重要です。
RSウイルス感染症の流行
RSウイルス感染症は、主に乳幼児が感染しやすい呼吸器系の感染症で、重症化すると細気管支炎や肺炎を引き起こすことがあります。2023年末から感染者数が増加し、2024年には例年を大きく上回る感染者数が報告されました。
特に0歳児や1歳児が入院を要するケースが増加しており、免疫を持たない乳幼児が増えたことや、対策が緩和されたことで例年より早い時期から流行が見られる地域もあります。感染予防と早期の対応が重要です。
手足口病の急増
手足口病はエンテロウイルスが原因で、手のひらや足の裏、口の中に発疹が現れる病気です。主に5歳以下の乳幼児が感染しますが、大人が感染するケースも増えています。
2024年は過去5年間で最も多い感染者数を記録し、特に保育園や幼稚園での集団感染が報告されています。手足口病は重症化することは少ないものの、稀に髄膜炎や脳炎を引き起こすことがあるため、感染予防が重要です。
リンゴ病(伝染性紅斑)の流行
リンゴ病(伝染性紅斑)はヒトパルボウイルスB19によって引き起こされる感染症です。主に子供に多く見られ、頬がリンゴのように赤くなる特徴的な発疹が現れます。2024年は学校や保育施設を中心に感染が拡大しました。
リンゴ病は通常、軽症で自然治癒しますが、以下の場合には注意が必要です。
- 妊婦が感染すると胎児に影響を与えることがある
- 基礎疾患のある人や免疫不全の人では重症化のリスクがある
感染拡大を防ぐためには、手洗いや咳エチケットを徹底することが重要です。
マイコプラズマ肺炎の流行
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ菌が引き起こす肺炎の一種で、咳が長引くのが特徴です。近年は流行が少なかったものの、2024年には大都市圏を中心に患者数が急増しました。
これはコロナ禍における感染症対策が緩和されたことが一因とされています。特に、免疫力が低下している子供や高齢者は感染しやすく、注意が必要です。
感染症流行の主な原因
コロナ対策による免疫の低下
新型コロナウイルス感染症が流行していた期間、マスクの着用や手指消毒、ソーシャルディスタンスの確保といった対策が徹底されました。これにより、コロナ以外の感染症も減少していましたが、その反面、自然免疫を獲得する機会が減少したことが問題となっています。
特に小児は免疫系が未発達なため、日常的な感染症との接触が減少したことで、免疫力の低下が顕著に表れています。その結果、劇症型溶血性レンサ球菌感染症や手足口病、RSウイルス、リンゴ病といった感染症に対して免疫がなく、感染しやすい状況が生まれました。
感染対策の緩和と意識の低下
2024年に入り、新型コロナウイルス感染症が収束に向かう中で、マスクの着用や手洗い、消毒といった感染対策を取らない人が増えました。特に以下のような傾向が見られます。
- マスクの着用率の低下
- 手洗いや手指消毒の回数減少
- 人混みを避ける意識の希薄化
これらが重なり、感染症が広がりやすい環境が生まれたと考えられます。
今後求められる感染症対策
感染症の流行を抑えるためには、改めて基本的な感染対策を徹底することが重要です。
手洗い後にNEWスーパーMで手指を乾燥除菌するなど、感染対策を徹底する事により、より感染リスクを減らすことができます。
最後に
2024年は劇症型溶血性レンサ球菌感染症、RSウイルス感染症、手足口病、リンゴ病(伝染性紅斑)、マイコプラズマ肺炎といった感染症が例年に比べて大幅に増加しています。新型コロナウイルス対策による免疫の低下と、感染症対策の緩和がその主な要因です。
しかし、感染症は正しい対策を取ることで予防が可能です。手洗いやマスクの着用、体調管理、早期の医療機関受診など、日々の行動の中で意識を高めることが求められます。感染症から自身や家族を守るためにも、基本的な予防策を徹底し、健康的な生活を心がけましょう。
出典:
- 国立感染症研究所ホームページ(https://www.niid.go.jp/niid/ja/)