厚生労働省は2026年10月6日、「令和8年度 今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策」を公式サイトに掲載しました。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症をはじめ、さまざまな呼吸器感染症への備えを改めて呼びかけるもので、手洗いや咳エチケットなどの基本的な感染対策に加え、学校、社会福祉施設、医療機関などにおける感染防止対策についても示されています。
2026年はインフルエンザの流行入りも例年より早く、冬本番を迎えてから対策を始めるのではなく、今のうちから施設や事業所の衛生管理を確認しておきたい状況です。
今回は、厚生労働省が示した今冬の対策と施設向けの感染予防の手引をもとに、施設・事業所で見直しておきたいポイントを紹介します。
「ARI」とは? 複数の呼吸器感染症をまとめた呼び方
ARIは「Acute Respiratory Infection」の略で、日本語では「急性呼吸器感染症」と呼ばれます。
急性の上気道炎や下気道炎を起こす感染症の総称で、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎など、さまざまな感染症が含まれます。
感染症によって流行する時期や特徴は異なりますが、手洗いや咳エチケットなど、共通して取り組める感染対策があります。
ARIは2025年4月から感染症法上の5類感染症に位置付けられ、全国の定点医療機関から発生状況が継続的に報告されています。
今年はインフルエンザの流行入りが例年より早い
日本では季節性インフルエンザは例年12月から3月頃に流行しますが、2026年は8月28日に流行入りが公表されました。
厚生労働省によると、感染症法が施行された1999年以来、2番目に早い流行入りです。
ただし、流行入りが早かったことだけで、その後必ず大規模な流行になるという意味ではありません。施設や事業所では最新の発生状況を確認しながら、その時々の状況に応じた対策を続けることが大切です。
新型コロナウイルス感染症についても発生状況の公表が続けられているため、特定の感染症だけに注目するのではなく、地域でどのような呼吸器感染症が発生しているのかを確認しておきましょう。
施設では「持ち込まない」「広げない」の両方を考える

厚生労働省は、学校や社会福祉施設、医療機関などではARIによる集団感染が起こることがあり、特に重症化リスクの高い人が多く利用する施設では、まず施設内へ病原体を持ち込まないことが重要としています。
一方、どれだけ対策を行っていても、感染症の持ち込みを完全になくすことはできません。
そのため施設・事業所では、「持ち込まないための対策」とともに、「発生した場合に施設内で広げないための対策」まであらかじめ考えておく必要があります。
冬を迎える前に、次のような点を確認しておきましょう。
- 地域の感染症の流行状況を確認する方法が決まっているか
- 利用者や従業員の体調変化を把握できるか
- 発熱や咳などの症状がみられた場合の連絡方法が決まっているか
- 手洗いや咳エチケットを実践しやすい環境になっているか
- 換気設備や空調設備の状態を確認しているか
- 感染症が発生した場合の施設内での対応方法が決まっているか
従業員の体調管理も大切な感染対策
施設では、利用者だけでなく、従業員の健康管理も重要です。
厚生労働省の施設向け手引では、施設等の従業者は外部と接触する機会が多く、施設へ病原体を持ち込む可能性があることを踏まえ、日頃から適切に健康管理を行うことが重要とされています。
咳などの症状がある場合には、マスクの着用を含む咳エチケットなど周囲への配慮を行い、咳に加えて発熱などの症状がある場合には、症状が改善するまで就業を控えることなども検討されています。
従業員が体調の変化を早めに伝えられる連絡方法や、体調不良時の対応について、あらかじめ施設内で共有しておくことも大切です。
手洗いと咳エチケットを改めて確認する
厚生労働省は、インフルエンザをはじめとするARIの基本的な感染対策として、「手洗い」と「マスクの着用を含む咳エチケット」などを挙げています。
施設では、利用者や従業員へ手洗いを呼びかけるだけでなく、実際に手洗いしやすい環境が維持されているかを確認しましょう。
- 石けんやハンドソープを切らしていないか
- 蛇口や自動水栓などが正常に使用できるか
- 手洗い場を清潔な状態に保てているか
- 手洗い後に十分に手指を乾燥できるか
- 手洗い方法を確認できる掲示などが必要ではないか
また、咳やくしゃみなどの症状がある場合には、マスクを着用したり、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を覆ったりするなど、周囲へ飛沫を広げないための咳エチケットも重要です。
冬を迎える前に換気方法も確認

施設内の感染対策では、室内換気についても確認しておきたいポイントです。
厚生労働省の施設向け手引では、施設の衛生確保や手指衛生などとともに、室内換気を検討することが示されています。
窓を利用して換気する場合は、対角線上にあるドアや窓を2か所開ける方法などが紹介されています。
冬場は窓を開けることで室温が低下しやすいため、暖房器具を使用しながら換気する、一方向の窓を少し開けて継続的に換気するなど、室温の変化を抑える工夫も紹介されています。
施設の構造や換気設備によって適した方法は異なります。冬本番になる前に、現在の換気設備が正常に作動しているか、どのような方法なら無理なく換気を継続できるかを確認しておきましょう。
来訪者への対応も事前に考えておく
多くの人が出入りする施設では、利用者や従業員だけでなく、来訪者への対応も感染対策の一つです。
特に高齢者など重症化リスクの高い人が多く利用する施設では、地域の流行状況や来訪者の体調などに応じて、必要な対策を検討することが大切です。
ただし、面会や施設利用を一律に制限するのではなく、それぞれの施設や利用者の状況を踏まえて判断することも求められています。
来訪時に注意してほしいことや、発熱・咳などの症状がある場合の対応を分かりやすく案内しておくと、利用者と来訪者双方が対応しやすくなります。
感染症が発生した場合の連絡体制を確認する

感染症対策は、日常の予防だけではありません。
施設内で感染症が発生した場合に、「誰が状況を確認するのか」「誰へ報告するのか」「どのように情報を共有するのか」といった流れをあらかじめ決めておくことも重要です。
厚生労働省の手引では、流行シーズンに入る前に施設内の発生動向を把握する体制を決めておくことや、必要に応じて協力医療機関との連携体制を整えておくことなどが示されています。
実際に感染症が発生してから対応方法を考えるのではなく、平常時に連絡先や対応手順を確認しておきましょう。
手洗い後の「乾燥」まで含めて衛生環境を確認

手指衛生では、石けんと流水で手を洗うだけでなく、洗った後に手指を十分に乾燥できる環境を整えることも大切です。
特に多くの人が利用する施設では、手洗い場の使いやすさだけでなく、利用人数や清掃・点検方法、消耗品の補充なども含め、日常的に無理なく管理できる環境になっているか確認しましょう。
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ただし、特定の設備だけで感染を防ぐことはできません。手洗い、咳エチケット、換気、体調管理など、複数の対策を組み合わせて継続していくことが基本です。
今冬に向けて確認したい施設の感染対策
- 地域の感染症発生状況を確認している
- 利用者や従業員の体調変化を把握できる
- 体調不良時の連絡・対応方法を共有している
- 石けんや手洗い設備を利用しやすい状態に保っている
- 手洗い後に十分に乾燥できる環境を整えている
- 咳エチケットを実践しやすい環境になっている
- 換気設備や換気方法を確認している
- 来訪者への案内方法を決めている
- 感染症発生時の施設内の連絡体制を確認している
- 必要に応じて医療機関や関係機関へ相談できる体制を確認している
まとめ
厚生労働省は2026年10月、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などを含む「令和8年度 今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策」を掲載しました。
2026年はインフルエンザの流行入りも例年より早く、冬本番を迎えてからではなく、今のうちから施設や事業所の感染対策を確認しておきたい時期です。
手洗い、咳エチケット、換気といった基本的な対策に加え、従業員や利用者の健康管理、来訪者への対応、感染症が発生した場合の連絡体制などについても見直しておきましょう。
大切なのは、一時的に強い対策を行うことではなく、それぞれの施設に合った方法で、日常的に続けられる衛生管理の体制を整えておくことです。
出典・参考情報(官公庁・公的機関公表資料)
- 厚生労働省「令和8年度 今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策」
- 厚生労働省「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」
- 厚生労働省「急性呼吸器感染症(ARI)に関する施設等内感染予防の手引」
- 厚生労働省「急性呼吸器感染症(ARI)」
- 厚生労働省「インフルエンザに関する報道発表資料 2026/2027シーズン」
注記:本ページは、施設・事業所における感染症対策に関する一般的な参考情報として、公的機関の公表資料をもとに作成しています。掲載内容は個別の症状の診断や治療、予防接種等の判断に代わるものではありません。体調に不安がある場合は医療機関へご相談ください。施設・事業所における感染対策については、関係法令、自治体の案内、各施設の衛生管理基準等もあわせてご確認ください。

