2025年冬のインフルエンザ流行と学級閉鎖の現状

ウイルス関連情報, 衛生関連情報

2025年冬のインフルエンザ流行は、例年より早く拡大が進み、教育現場では学級閉鎖や学年閉鎖が全国的に増えています。一般財団法人日本医師会健康教育研究所(JIHS)が運用する学校欠席者・感染症情報システム(SCASS)の集計を基に厚生労働省が公表した第47週(2025年11月17〜23日)の報告によれば、全国で3,584施設が閉鎖措置を実施しました。
このデータは調査参加施設からの報告に基づくため、全国の実際の件数はさらに多い可能性があります。

流行の背景にある要因

今季の流行を特徴づけている要因の一つが、A型H3N2系統にみられる抗原性の変化(抗原ドリフト)です。国立感染症研究所の解析では、秋以降に検出されているH3N2の多くが、従来株とは一部抗原性が異なる3C.2a系統の新たなクラスター(drift strain)に属することが示されています。
一部では便宜的に「サブクレードK」と紹介されるケースもありますが、学術的には上記の系統分類に基づいて評価されています。

こうした抗原性の変化は「免疫のすり抜け」を生みやすく、過去の感染や今季ワクチンの効果が相対的に弱まる可能性があるとされています。また、H3N2は咳や鼻水など一般的な風邪症状に似た経過をとることが多く、感染に気づかず登校・出勤してしまうケースが集団内での拡大を助長しているとみられます。

インフルエンザ 定点当たり報告数 ~過去10年間との比較~

インフルエンザ 定点当たり報告数 ~過去10年間との比較~

地域別の特徴

都道府県別のデータを見ると、閉鎖施設数には大きな地域差があります。特に埼玉県(714施設)、千葉県(481施設)、東京都(458施設)、兵庫県(494施設)、大阪府(422施設)など都市部で顕著な増加がみられました。
人口密度が高く、子ども同士の接触機会が多い都市部は流行が加速しやすく、学級閉鎖が連鎖的に発生する傾向があります。

休校、学年閉鎖、学校閉鎖施設数(インフルエンザ様疾患発生報告(第12報))

休校、学年閉鎖、学校閉鎖施設数(インフルエンザ様疾患発生報告(第12報))

年末へ向けての対策ポイント

  • ワクチン接種の再確認
    サブクレードKの影響が指摘されているものの、重症化予防効果は維持されています。特に子ども、高齢者、基礎疾患を持つ人は接種が推奨されます。
  • 基本的な感染対策の徹底
    手洗い、咳エチケット、換気の強化に加え、体調不良時には無理をせず休むことが重要です。
  • 早期受診と迅速な対応
    インフルエンザ治療薬は発症から48時間以内が最も効果的です。軽い症状でも早めの受診が拡大防止につながります。

流行状況の把握と情報確認の重要性

学級閉鎖の件数は流行が進んだ後に表れやすい「遅行指標」です。そのため、地域の実際の感染状況を把握するには、厚生労働省の定点報告や各自治体の感染症情報を定期的に確認することが有効です。
閉鎖が増えている地域では、冬休み前後のイベント調整や感染対策の強化など、早めの判断が流行抑制に寄与します。

まとめ

2025年のインフルエンザ流行は、サブクレードKの影響と流行の前倒しにより、すでに多くの教育施設へ影響が及んでいます。年末年始に向けて、改めて体調管理と基本的な感染対策を見直し、流行期を安全に乗り越える備えが必要です。

出典:

注記:本ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。検査や薬の使用、保険適用の可否などについては、必ず医師や専門機関にご相談ください。体調不良や緊急の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

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