最新統計で見る百日咳流行の現状 – 2025年
百日咳とは?
百日咳(ひゃくにちぜき)は、ボルデテラ・パータス菌によって引き起こされる、強い感染力を持つ呼吸器感染症です。名前の通り、咳が数週間から数ヶ月続くことがあり、特に乳児では重症化するリスクがあります。
主な症状は、以下の通りです。
- 初期:鼻水、軽い咳、微熱(風邪と似ている)
- 中期:発作的でけいれん性の咳、顔面紅潮、嘔吐を伴う
- 回復期:咳の頻度は減るが、長引く傾向
百日咳の流行状況【2025年】
2025年5月第22週(5/19〜26)時点での累計報告数は25,037人。
前年(2024年)の年間報告数(約4,000人)を大きく超え、週ごとに過去最多の報告数を更新し続けています。
なぜ百日咳が増えているのか?
- ① 免疫の低下(いわゆる「免疫負債」)
- コロナ禍におけるマスク着用や外出自粛により他人との接触が減少し、百日咳に対する自然免疫が低下したことが一因とされています。
- ② 抗生物質耐性菌の存在
- 百日咳菌の一部にはマクロライド系抗菌薬への耐性を持つタイプが出現。これにより、治療が難航するケースもあり、適切な抗生物質の選択が重要となっています。
特に注意が必要な年齢層
乳児
- 生後6か月未満では重症化率が高く、無呼吸・けいれん・肺炎・死亡例も報告されています。
- ワクチン接種がまだ完了していない年齢のため、家族からの感染予防がとても重要です。
10代(中高生)
- 現在の流行の中心は10~19歳。学校や塾などでの集団感染に注意が必要です。
- ただし症状が軽く、風邪と誤認しやすいため、知らないうちに感染を広げているケースもあります。
日常でできる予防策
- 咳・くしゃみが出るときはマスクや肘で覆うなど、咳エチケットの徹底。
- 家に乳児がいる場合は、外出先から戻った際に手洗い・着替え・マスクの着用を徹底しましょう。
- 感染者が家族内にいる場合は、同室を避ける・消毒を行うなど接触を最小限に。
咳が続いたらすぐに受診を
- 「咳が長引く」「発作のように咳き込む」「咳の後に嘔吐がある」などの症状がある場合は、百日咳の可能性があります。
- 医師の診断のもとで、早期に抗生物質治療を開始することが大切です。
職場・学校・ご家庭・地域で意識したいこと
- 子どもが集まる場では「風邪かな?」と思っても、早めに医療機関を受診しましょう。
- 定期接種の未接種・打ち忘れがないか、母子手帳や接種歴を確認。
- 家族で感染対策を再確認し、特に乳児や妊婦といったハイリスクな方々への感染を防ぐよう心がけましょう。
- 多くの人が出入りする職場や学校、公共施設等では、入り口にNEWスーパーMを設置することで、施設内への菌の持ち込みを効果的に抑えられます。
出典元
・NIID 国立感染症研究所 | 国立健康危機管理研究機構(Japan Institute for Health Security:JIHS)
・Recent increase in infant pertussis cases in Europe and the critical role of immune stimulation. Int J Infect Dis. 2024;doi:10.1016/j.ijid.2024.107148